正当防衛の判例を見てみる その3 ~認められなかった例~

正当防衛が成り立つかどうかについて、今回は認められなかった例を紹介します。

事件の概要

判例:平成26(わ)1122

容疑:傷害致死(第205条)

求刑:懲役5年

事件の内容は以下の通りです。

被告人は,被害者と共にタクシーに乗車して,自宅のある同区d町e番地f先路上に向けて移動していたところ,酒に酔った被害者が,上記床上にあおむけになった体勢で,両足を激しくばたつかせるなどして暴れたことから,自己又はBの各身体及びタクシー内の備品等を防衛するため,防衛の程度を超え

(略)

被害者の動静に応じて,断続的に,軽く殴る,暴れる足をつかむ,上半身を押さえるなどしながら,同人を床上に押し込む状態を維持し

(略)

右足で同人の鼻,口又は頸部付近を踏み付け圧迫するなどの暴行を加え,よって,同日午前1時54分頃,同区i町j番地所在の横浜市立市民病院において,同人を頸部圧迫に伴う窒息により死亡させた。

引用:裁判例 平成27(わ)849 ※PDF

少し長いですが、簡単に言うと被告人は被害者に対して暴行を加えて死亡させたとです。一方の弁護側は「被告人は被害者が暴走したがために攻撃を加えたものであり、無罪である」という主張をしました。

この事件の検察と弁護側の争点は4つありますが、この記事では正当防衛の部分に関して取り上げていきます。

事件の全容

まずは事件全体を時系列にまとめてみます。

  1. 酩酊状態の被害者がタクシーの中で急に暴れだす
  2. 被告人はそれに対して被害者に攻撃を加える。首を絞める行為も行った結果、被害者が亡くなった

被告人と被害者のトラブルの様子について細かく書かれていますが、この事件の流れ自体はシンプルにまとめることができます。

そして、被害者は医者から酒の制限を言われており、被告人もこのことを知っていました。

正当防衛は認められるか?

弁護側は被害者が急に暴れだしたためにやむを得ずとった行動であるため、正当防衛が成立するとしていますが、果たしてどうでしょうか?

差し迫った状況だったかどうか?

被害者は急に暴れだしているため、被告人やタクシーなどに対してまさに危機が迫っている状況であると判断しました。

検察は先に被告人が攻撃したから被害者が暴れだしたとしていますが、被害者は酩酊状態であったためにいつ突拍子もない行動をするかがわからない状況であったとこれを否定しました。

自分または他人を防衛するためかどうか?

先ほど述べたとおり、被害者は暴れている状態であるため、被告人は自分やタクシーを守るためにこの行動を行った・・・となりそうですが、実は被告人は被害者がお酒に対して問題を抱えていることを知っていたのです。

そのため、何も知らない人と比べてこの部分は慎重に判断するべき事案であるとしました。

過剰防衛でないか?

それを考えると、被告人が被害者に行った「首を絞める」という行為も含む攻撃はやりすぎであり、ほかに軽い方法でこれをおさめることは十分に可能であったとし、被告人のが被害者に行った攻撃は過剰防衛である(正当防衛は成立しない)と判断したのです。

判決

被告人は懲役2年6ヶ月、執行猶予3年の刑に処されました。

検察が主張した傷害致死罪がそのまま適用されました。

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